
合同会社ピレア 代表 森 裕
18年間、病棟の看護師として、多くの患者さんとご家族に向き合ってきました。
その中で、ずっと心に残っている悔しさがあります。本当はもっと、その人の話を聞きたい。もっと、その人らしい過ごし方を一緒に考えたい。けれど、決められた時間と業務の中で、気づけば「流れ作業」になってしまう瞬間がある。できたはずのことを、できなかった。そんな悔しさを、何度も味わってきました。
在宅で看護をする、ということは、その悔しさに向き合い直すことでもあると思っています。病院よりも、その人のペースで、その人の暮らしの中で、向き合う時間を持てる。それが、訪問看護を選んだ理由のひとつです。
美は、健康のバロメーター
私は、「美」は結果ではなく、指標だと思っています。肌の艶、髪のつや、身だしなみへの関心——これらは、その人の心とからだの状態を映す、静かなサインです。
そして、看護の現場で近くにいるからこそ、私たちはその変化に気づき、提案できる立場にあります。「今の状態を維持すること」だけを見ていては、その人が本来持っている「きれいになりたい」「楽しみたい」という気持ちを、置き去りにしてしまう。それは、尊厳への配慮が足りないのではないか、と私は感じています。
美への関心は、性別を問わず、生きる原動力になります。看護師が関われるのは、生死にかかわることだけではないと、私は思っています。
ふらっと立ち寄れる場所に、そしてご家族の癒しにも
エステサロンには、看護を必要としていない方も、ふらっと立ち寄っていただけます。髪や肌を整えに来て、世間話のついでに「実は家族の具合が心配で」と話してもらえる。そんな場所になれたらと思っています。
また、在宅での看護や介護は、ご本人だけでなく、支えるご家族にも大きな負担がかかります。エステサロンは、日々介護に向き合うご家族が、少し離れて、自分自身をいたわる時間を持てる場所でもありたいと思っています。
まだ元気なうちから、まちの人と関わっていたい。いつか看護が必要になったときも、迷わず頼ってもらえる関係を、少しずつ育てていきたいと思っています。